遺言のすすめ
相続に関する問題で一番多いのが、遺産分割に関する紛争です。
争いにこそならなくとも、相続人間でなかなか話し合いがまとまらず、例えば不動産の名義が亡くなった人の名義のまま放置されてしまうケースが多々あります。この一番の原因は、亡くなった人の意思が分からないことです。これは仲の良いご家族を含め、誰にでも起こりうる問題です。
そこで、最愛のご家族に無用な争いを起こさせないためにも、遺言を残しておくことをお勧めします。
また、遺言を残しておこうという気持ちがあっても、どうしても「いつか死ぬまでに」とつい考えがちです。しかし、死期が迫ってからの遺言は時としてその効力が争われたりします。健康で意思能力が十分ある時に作成しておきましょう。
特に必要な場合
次の場合は、特に遺言を残されることをお勧めします。
1.内縁の妻(または夫)や配偶者(夫や妻)の連れ子に財産を残したい場合
例えば内縁関係にある妻は、どんなに長く生活を共にしていても相続人とはなりません。配偶者の連れ子も同様です。
したがって、内縁の妻や配偶者の連れ子に財産を残したい場合には遺言を残しておきましょう。
2.生前とくにお世話になった人に財産を残したい場合
長年お世話になった人に財産を残したい場合でも、その人が相続人でない限り遺産 を相続する権利はありません。しかし、遺言を残しておけば実現することが可能です。
3.夫婦間に子供がいない場合
夫婦の間に子供がいない場合、相続人は妻(または夫)と親、もしくは妻(または夫)と兄弟となります。例えば、相続人が妻と兄弟の場合で、さらに兄弟の中で既に死亡している人がいるとその子供(甥や姪)が相続人となります。
こうなると普段交流の少ない親族が遺産分割に加わることとなり、話し合いがスムーズにいかないケースがあります。
4.子供同士が不仲など、相続人となるご家族同士の仲が良くない場合
このような場合には将来の紛争を未然に防ぐためにももちろん遺言を残しておいたほうがいいでしょう。
特に音信不通で行方不明の子供などがいる場合には、後日の調査や手続きに費用
と時間を要することになります。
遺言の種類
一般的に遺言を作成する場合の普通方式による遺言書作成には次の3つの方式があります。
1.自筆証書遺言
遺言者自ら自筆で記載する遺言です。あくまで自筆ですので、タイプやワープロは認められません。費用もかからず、ご自身で簡単に作成できるという長所があります。
しかし、民法に定める方式に従わなくてはなりません。これに反すると、無効になる可能性がありますので注意が必要です。また、他の方式に比べて偽造や変造、毀損の虞が大きいといえます。
2.公正証書遺言
公正書証によってする遺言です。公証人が関与するので、その分コストはかかりますが、法的に要件を満たさず遺言が無効になることは通常ありません。また、作成後、原本は公証役場で保管されますので、偽造や変造、毀損の虞がないこともこの方式の長所です。
3.秘密証書遺言
遺言者自ら作成した遺言書に署名・押印し封印したものを、公証人に公証してもらいます。自筆証書遺言と違い、署名があれば、遺言自体は自書でなく例えばタイプやワープロであっても認められます。内容を秘密にできるうえ、遺言の存在を明確にできる点が長所です。
しかし、遺言自体は自身で作成し、公証人はその内容について関与しませんので、自筆証書遺言同様、遺言の要件を理解していないと無効になる可能性があります。また、公証人に提出の際に証人二人の立会が必要です。
当事務所では、ご依頼人の意向を伺ったうえで遺言方式を決定するところからお手伝いさせていただきます。
遺言書作成手続きの流れ
1.遺言作成のご依頼
まずは、お気軽にご相談ください。
ご都合のいい時にご来所いただくか、こちらからお邪魔させていただいてお話を伺います。
2.お打合せ
ご希望の遺言内容をお聞かせいただきます。もちろん秘密は厳守いたしますのでご安心ください。また、打合せのうえ遺言方式を決定します。
3.原稿のご確認
遺言の文案を作成し、ご案内いたします。ご意向どおりの文案になっているかどうか、確認をしていただきます。
4.遺言書の作成
公正証書遺言の場合:一緒に公証役場に行き、または公証人に来てもらい、公正証書遺言を作成します。遺言の内容を確認のうえ、ご本人、証人、公証人が署名押印します。
自筆証書遺言の場合:ご本人に自筆で清書していただきます。
5.遺言の完成
公正証書遺言の場合:公正証書遺言の原本は公証役場で保管され、正本が交付されます。
自筆証書遺言の場合:封をしていただいたうえ、ご自身で大切に保管していただきます。
遺言書
一般に遺言とは、死後のために物事を言い遺すことです。
遺言の必要性
自分の子供たちは昔から仲良しで、そんなことはあり得ない、と言われる方も、トラブル防止に遺言は必要です。子の配偶者その他の人々が、微妙に関与してくることがあるのです。転ばぬ先の杖です。紛争予防に極めて有効な手段として遺言を活用しましょう。特に次のような場合には遺言書の作成をお勧めします。
子供、親がなく、残る配偶者にマイホームその他の遺産を残したい
個々の遺産をそれぞれ個別に相続人に確実にひき継がせたい。
特に、農地や稼業の店舗を特定の相続人へ引き継がせたい場合など。
子供を認知しておきたい。
生前中は家族には秘密にしておいたが、その子供の将来のためにきちんとしておきたい。
虐待を受けたので、その相続人を相続人の地位からはずしたい(相続人の廃除)。
相続人以外の人に財産を贈与したい、慈善団体に寄付したい。
次のようなことも、遺言で意思を伝えることができます。
遺産分割を凍結すること(5年以内)
祭祀の主催者(お墓を守っていく人)を指定しておくこと
遺言執行者を決めておくこと
遺留分減殺方法の指定、特別受益の持戻し免除、等
遺言書の作り方
1.普通方式
(1)公正証書遺言
証人二人以上の立会いのもとに公証人が遺言書を作成します。
偽造・変造等のおそれはなく、公証人が内容を確認しますので、後日無効になる心配もありません。また、他の遺言方法と異なり、家庭裁判所での検認手続きが不要です。
最も安全で確実な方法といえます。通常は、公証人役場に遺言者が出向いて行いますが、病気などで行けない場合は、公証人の方が、遺言者のもとに出向くことも可能です。
(2)自筆証書遺言
便箋など適宜の用紙に、遺言の内容全文・日付・氏名を自署し、押印することが必要です。手軽に作成できますが、後日、自署や内容の解釈で問題になったり、偽造・変造・滅失・隠匿・未発見のおそれがあります。また家庭裁判所で検認手続きを受ける必要があります。
(3)秘密証書遺言
内容を記載した遺言書(自筆である必要はありません)に遺言者が署名押印し、封筒に入れて封印し、公証人と証人二人以上に提出してその確認を受けます。実際に利用される例はあまりありません。
2.特別方式
(1)危急時遺言
病気やその他の事由で、死亡の危急に迫った者が遺言するときに認められた特別な方式です。
(2)隔絶地遺言
伝染病のため隔離された場所にいたり、船の中にいたりなど、普通の方式の遺言が困難な場合に認められた特別な方式です。